霧の晴れた瞬間

tugen
 
道路に沿って延びながら眺望をわざとさえぎる低い1層の「壁」として現れる。しかしある地点までくると、壁はぽっかりと中断し、玄関の中庭からその向こう側のテラスへと導く小径を通して、ブルノ城の遥かな眺めが切り取られたように見えてくる。しかしこのところでは、まだ眺めは彼方に隔てられたままである。手摺りが小径をさえぎるように立てられ、眺めがたんなる一つの「前触れ」として理解されるべきことを告げるのみである。この小径につづく湾曲した半透明の壁が訪問者を玄関扉まで導く。すると半円形の階段室が前に進む動きを下の方へ誘ってひろびろとしたところに出る。そこでははじめのあの前触れが現実のものとなり、天気さえ良ければ、床の上から消失してしまうガラスの壁を通して眺められる一続きの景色となるのである。 ‥‥‥
  
この文章は私の宝物。 建築の面白さを初めて理解できた、霧の晴れた瞬間。

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