横浜の景観

横浜市には都市デザイン室という部門がある。
 港の見える丘公園や外人墓地などの観光地近くで建築物を計画する際、外観が景観に合うか審議する。学校や企業などの大看板を撤去するよう助言もする。山下公園を山側から見下ろす際、広告が目立たぬよう工夫も施されているという。
 全国に先駆けて1971年に設置。元町や馬車道といったエリアが美しさを維持する所以(ゆえん)となっており、その存在意義は大きい。
 皮肉なことだが、最近の横浜市は広告が増えた。バス停の風よけや市営地下鉄の駅名の脇にも多くの広告が目に付く。財政を立て直す収入源なのだ。
 現代人が1日で目にする文字情報は、昔の数十倍に及ぶらしい。興味がなくても見せられる広告を、巧いとも感じるが、最近の街中は歩くだけで目が疲れる。
 公共の空間は東洋に比べ、総じて西洋の方が美しいと思う。その一因は行政の広告規制の徹底だ。日本人は高い美意識を備えているはずだが、公共の空間や施設になるとなぜか経済が最優先される。訪れる人の目を和ませ、住む人が誇りに思える景観に美意識を向けられないものだろうか。 
 
 
 
朝日新聞 声
(朝日新聞 声) 

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